当院では、補聴器の相談・フィッティング(補聴器を、患者さんそれぞれの聞こえに最も適した状態に調整する)・販売および購入後の定期的な点検・調整を行っております。
補聴器を考える前に、耳に治療が必要な病気が無いかどうかの診察が必要です。耳垢を取り除いたら聞こえが良くなった、鼓室にたまった水を吸い取ったら聞こえが良くなった、などのケースも少なくありません。
医師が耳の中を診察し、耳疾患の診断、聞こえの検査(純音聴力検査)と言葉の聞き取りの検査(語音聴力検査)を行い、補聴器により聞こえが良くなりそうかどうかを判断します。また、患者さんそれぞれの聞こえに応じて、どのような補聴器を使用すべきか、左右どちらの耳に装用すべきか、音の大きさをどれくらいに設定するか、音質をどうするかなどを決めます。その他さまざまな機能(雑音抑制、方向性、ハウリング防止など)について検討します。2週間から1か月の間試聴していただき、有用であれば購入していただきます。購入後も補聴器の点検・調整や耳の診察のために定期的に通院していただきます。
眼鏡は購入直後よりほぼ問題なく使用できますが、補聴器の場合は、最初いろいろな音が混入するため、不快に感じます。この時点で補聴器を使用することをあきらめると、補聴器に対する悪い印象(うるさい、使いにくいなど)だけが残り、補聴器を使用するのが嫌になります。しばらくの間は脳を慣らしてゆく過程が必要です。補聴器試聴期間は、1日のうちできるだけ長い時間補聴器を装用する必要があります。
補聴器は両耳に装用するのが理想的です。音の方向性、雑音の中での聞き取り、音質の広がりなどは、両耳に装用する方が良好になります。片耳装用でもそれなりの効果はあります。
最近では、まだ聞こえの悪さが軽症のうちから補聴器を装用すべきと考えられるようになりました。聞こえの悪さが軽いうちが、脳が音の変化に対応しやすいためです。
数年前に、権威のある国際学会で、「中高年の難聴は、認知症の一番の危険因子である」ことが発表されました。認知症を予防するためにも、難聴の診断・治療、補聴器の使用は重要です。